20年後の景色
20年前の1999年といえば世の中は「ノストラダムスの大予言」のせいで世紀末イメージが蔓延していた。
そんな時に新卒から働いていた会社を超早期退職した。
会社員でいるときはどうしても長期で休暇を取得することができない。
でもやめてしまえば、いくらでも休んで世界を放浪できるということで会社をやめて、スペインを1ヶ月放浪した。
ふと気がつけばそれから20年が経っている。
あれから20年、どうなっているのか気になった。
考えれば、僕はわりと10年という周期で定点観測している。
永平寺で座禅したのは20歳の誕生日の時であり、その後30歳の誕生日にも再び座禅に挑戦したし。
20年前になぜスペインだったかというと、ドン・キホーテの影響が強いかもしれない。
安定したサラリーマン生活を捨てて、自分でフリーランスとして企画の仕事を請け負うつもりだった。
今考えると、ドンキホーテのバカみたいな無我夢中の勇気をもらいたかったのかもしれない。
ということでスペインでの第一目的地はラマンチャ。
特に風車のある町としては有名なカンポ・デ・クリプターナ!
マドリッドから直接行くのは少々不便だが、時間はたっぷりある身だったので、まずはカンポ・デ・クリプターナに向かった。
思ったより田舎で人懐こい子供達でいっぱい。
1999年当時は日本でデジタルカメラが出回ったばかりなので、デジカメ片手に写真を取りまくり、
その場で見せてあげると魔法のようでみんなが喜ぶこと喜ぶこと。
宿泊は町に一つしかない教会の向かいにあるホステル、サンチョパンサ。
そこを拠点に3日ほど滞在した。
当時、サンチョパンサの下にはバルがあって、朝昼晩とずっと入り浸っていた記憶がある。
当然、常連の人とも仲良くなり、そのバルのママとも知り合いになった。
ただ、さすがスペインの片田舎ということで英語がほとんど通じず、ほぼスペイン語しか話せず、常連の1名がほんの少しだけ英語を聞き分ける程度だった。
20年前の充実したスペインの旅はほぼそこから始まった。
それから20年、ふとデジカメのデータそのものがあるので、それをプリントして持参してみると面白いかもというアイディアが突然浮かんだ。
マドリッドのような大都市では無理だろうけど、カンポ・デ・クリプターナなら案外、写真に写る顔を知っている人がいるのではないか?
当時から20年経っているので、写真に写っている子供達の今はそれぞれどうなっているのか?
残念ながら亡くなられた人もいるだろうし、立派な成人になって活躍している人もいるはずだ。
ということで20年ぶりのスペイン、まずはカンポ・デ・クリプターナに行くことにした。
日本でサンチョパンサを予約しようとしたが、もはや営業していなかった。
カンポ・デ・クリプターナへは交通の便が悪いのでまずはアルカサールにrenfeで向かい、そこに宿泊。
そこからタクシーでカンポ・デ・クリプターナの風車に向かった。
風車のそばに素敵なレストランがあったので、そこで写真を見せて聞き込み開始。
写真に写っている顔の何人かの情報はゲットできた。
残念ながらサンチョパンサの下のバルのママはもう店を畳んだようで、常連の男性は教会近くの花屋の店主であることが判明した。
まずは風車の丘から見える教会に向かって坂道を下っていく。
サンチョパンサの建物はそのまま存在していたけど、やはり今は営業してしていない模様。
でも隣の店の人が開店準備で前を掃除していた。
その人に尋ねてみると、何とその人が20年前のバルのママだった!
サンチョパンサが閉店したので、そのままバルも店仕舞いし、すぐ隣でピザショップを開いたそうだ。
写真に写っていたお子さんは二人とも結婚してマドリッドに住んでいるようで、結婚式の写真など見せてもらった。
持参した写真を全て渡して、ミッション終了。
20年後の世界を覗くことができて楽しい1日だった。
オーヘンリーの短編「20年後」は予想外のオチだったけど、僕の「20年後」は想像通りだった。